リース車両で交通事故に遭った場合、車両の所有者はリース会社であるため、「誰が」「何を」加害者側に請求できるのかが通常の物損事故とは異なります。修理費・時価額(全損)の請求権者と、リース車両特有の注意点を解説します。
1. リース車両の法律関係
リース車両の所有者はリース会社であり、ユーザー(借主)は使用者として車両を利用しています。車検証上も、所有者欄はリース会社、使用者欄はユーザーとなっているのが通常です。このため、事故で車両が損傷した場合の損害賠償請求権が誰に帰属するかは、リース契約の内容を踏まえて判断する必要があります。
2. 修理費の請求権者
車両の所有者はリース会社ですので、理屈のうえでは車両損傷による損害賠償請求権はリース会社に帰属するのが原則です。もっとも、ファイナンスリースを中心とする多くのリース契約では、車両の維持・修繕義務や毀損・滅失の危険負担はユーザーが負うと定められています。このようにユーザーが自らの負担で修理すべき立場にある場合には、ユーザーに修理費相当額の損害が発生していると評価でき、実務上、ユーザーが加害者側に修理費を請求することが認められています。
いずれにしても、リース契約の条項(修繕義務・危険負担・保険に関する定め)の確認が出発点になります。
3. 全損(時価額)の場合の請求権者
修理が不可能な場合や、修理費が車両の時価額を上回る場合(経済的全損)には、賠償の対象は車両の時価額となります。時価額は車両の交換価値そのものの喪失であり、その損害は原則として所有者であるリース会社に帰属します。したがって、全損のケースでは、時価額の請求はリース会社が行うのが原則です。
他方で、ユーザーはリース契約上、車両が全損となった場合でも残リース料や規定損害金の支払義務を負うことが多く、リース会社が受領した賠償金がこれらの精算にどう充当されるかは契約によって異なります。全損事案では、ユーザー・リース会社・加害者側保険会社の三者間での調整が必要になるため、早い段階で契約内容を確認し、リース会社と連携して進めることが重要です。
4. 休車損害・代車料など
事業用のリース車両が使えなくなったことによる営業上の損害(休車損害)や、代車を手配した費用は、車両そのものの損害とは別に、実際に損害を被ったユーザーが請求します。休車損害の立証には、稼働実績や売上資料の準備が必要です。
5. リース車両特有の注意点
- 事故発生時はリース契約に基づきリース会社への報告義務があるのが通常。まず契約書を確認し、速やかに連絡する
- 修理に着手する前に、修理先や修理内容についてリース会社の承諾が必要とされている契約が多い
- 示談の際は、車両損害の請求権者が誰かを明確にし、必要に応じてリース会社を協議に加える(ユーザーだけで車両損害を示談してしまうと、リース会社との関係で問題が残ることがあります)
- 車両保険(リース会社付保・ユーザー付保)の有無と、保険金の充当関係を確認する
- 全損時の規定損害金・中途解約金の負担と、加害者側からの賠償金の関係を整理する
6. 弁護士費用特約は使えるか
リース車両の物損請求でも、弁護士費用特約を使えることが多いといえます。弁護士費用特約は、被保険者が自分の損害について賠償請求する場面で使うものですので、リース契約上ユーザーが修繕義務・危険負担を負い、修理費相当の損害がユーザーに帰属すると評価できる場合には、リース車両であること自体は特約利用の妨げになりません。リース車両では任意保険はユーザー側が契約者・記名被保険者(法人契約であれば法人)として付保しているのが通常ですので、その保険に弁護士費用特約が付いていれば、修理費・休車損害・代車料などユーザー固有の損害の請求に利用できます。物損のみの事故でも特約の対象とする約款が一般的であり、特約を利用しても等級には影響しません。
注意点として、①一部の特約商品は対象を人身事故に限定しており物損のみの事故では使えないため約款の確認が必要であること、②法人の事業用リースでフリート契約等の場合はそもそも特約が付帯されていないことがあること、③全損の時価額の請求は原則としてリース会社に帰属するため、ユーザーの特約で対応するのは基本的にユーザー固有の損害部分であること、が挙げられます。
よくあるご質問
Q. リース車で事故に遭いました。修理費は自分で請求できますか?
リース契約上、修理義務・危険負担をユーザーが負っている場合には、ユーザーが修理費相当額を請求できるのが実務です。まずは契約書の確認をおすすめします。
Q. 全損と言われましたが、リース料は払い続けるのですか?
多くの契約では全損時も規定損害金等の支払義務が残りますが、リース会社が加害者側から受領する賠償金との精算により負担が調整されることがあります。契約内容と精算関係の確認が必要ですので、ご相談ください。