骨折や靱帯損傷などの後、関節が事故前のように動かなくなってしまうことがあります。このような関節の可動域制限は、「機能障害」として後遺障害等級認定の対象になります。認定の基準と、正しく認定を受けるためのポイントを解説します。
1. 可動域制限の後遺障害等級
上肢(肩・ひじ・手首)と下肢(股・ひざ・足首)の各3大関節については、健康な側(健側)の可動域と比較して、どの程度動きが制限されているかにより等級が定められています。主なものは次のとおりです。
- 第8級(関節の用を廃したもの):関節が強直した場合など。
- 第10級(関節の機能に著しい障害を残すもの):可動域が健側の2分の1以下に制限された場合。
- 第12級(関節の機能に障害を残すもの):可動域が健側の4分の3以下に制限された場合。
2. 前提として「器質的損傷」が必要です
可動域制限が機能障害として評価されるためには、その制限の原因となる器質的損傷(骨折・脱臼・靱帯損傷・神経損傷など)が、レントゲン・CT・MRI等の画像で確認できることが前提とされています。
画像上の異常がなく、痛みのために動かせないという場合には、機能障害としてではなく、神経症状(12級13号・14級9号)として評価されるのが通常です。どちらのルートで申請するかによって準備すべき資料が変わりますので、事前の見立てが重要です。
3. 可動域の測定方法
- 測定は、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の定める方式に基づき、原則として他動運動(医師が動かして測る)の数値によります。
- 各関節の「主要運動」の数値で判断され、主要運動の制限がわずかに基準に届かない場合には「参考運動」の数値が考慮されることがあります。
- 原則として健側との比較で判断されます(両側に障害がある場合等は参考可動域角度と比較します)。
4. 適切な認定を受けるためのポイント
- 後遺障害診断書の可動域欄は、すべての運動方向について正確に測定・記載してもらうことが重要です。測定漏れや自動値のみの記載は不利に働くことがあります。
- 症状固定を急がないことも大切です。改善の余地があるうちに固定すると実態と異なる評価につながることがあります。
- 原因となる器質的損傷の画像(骨折部位の変形治癒、関節面の不整等)と可動域制限との整合性が審査されます。画像所見の整理も含め、提出資料の準備が結果を左右します。
よくあるご質問
Q. 痛くて動かせないだけでも認定されますか?
画像上の器質的損傷がない場合、可動域制限そのものが機能障害として認定されることは難しいですが、神経症状として14級9号・12級13号の認定を受けられる可能性があります。
Q. 測る日によって数値が違うのですが。
測定値には多少の変動があり得ますが、認定は原則として後遺障害診断書に記載された症状固定時の他動値で判断されます。だからこそ、測定時に正確に測ってもらうことが重要です。数値に疑問がある場合は再測定の依頼も検討します。
※ 本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的なご状況については弁護士にご相談ください(交通事故のご相談は無料です)。