最初の事故(第1事故)の治療中に、別の交通事故(第2事故)に遭ってしまうことがあります。受傷部位が重複する場合は「異時共同不法行為」の問題となり、示談の順番や後遺障害申請の進め方に特有の注意点があります。
異時共同不法行為とは
複数の加害者による不法行為が同一の損害の発生に関わる場合を共同不法行為といいます(民法719条)。交通事故では、第1事故の治療中に第2事故に遭い、受傷部位が一部または全部重複する場合に、異時共同不法行為の問題となります。典型例は、追突事故でむちうちの治療中に再び追突され、同じ首・肩の症状が続いているケースです。
そのため、たとえば第1事故の治療中に第2事故が発生したとしても、受傷箇所が全く異なる場合には、理屈上は異時共同不法行為の問題ではなく、それぞれ別事故として別個に対応を進めることになります。
保険会社の対応(一括対応の引継ぎ)
実務上は、第2事故に遭った段階で受傷箇所が一致する場合、第1事故の保険会社から第2事故の保険会社に「一括対応」(保険会社が治療費を事前に負担する取扱い)が引き継がれます。以後の治療費は第2事故の保険会社が対応するのが通常です。
示談の順番に注意――第1事故を先に示談してはいけません
第2事故が発生した段階で、第1事故の通院期間は形の上では確定します。そのため、第1事故の保険会社から先に示談金の提示がされることがあります。しかし、先に第1事故について示談をすることはおすすめできません。第2事故の賠償額が確定し示談した段階で、第1事故の示談を進めるべきです。
理由は次のような事態が懸念されるからです。第2事故の保険会社は、「第2事故後の通院治療には第1事故の症状が影響しているから、第1事故の保険会社も第2事故の賠償の一部を負担すべきだ」と主張することがあります。このとき、先に第1事故を示談してしまっていると、第2事故の保険会社が賠償額の一部の負担を拒否した場合に、第1事故の保険会社へ請求しようとしても、「第1事故は既に示談済みであり、追加の請求には応じない」と主張され、請求できなくなるおそれがあります。
後遺障害申請のポイント
- 後遺障害診断書には、第1事故・第2事故の2つの事故日を記載してもらう
- 後遺障害診断書は、第2事故の治療を担当した医師に記載してもらうことが望ましい
- 可能であれば、第1事故と第2事故は同じ医療機関を受診する。同じ医師が症状の経過を一貫して把握でき、診断書の記載や因果関係の説明の点で望ましい
自賠責保険の枠を2つ利用できる
異時共同不法行為の場合、第1事故と第2事故それぞれの自賠責保険会社の保障の枠を利用できます。傷害部分であれば、限度額120万円×2社=240万円の枠となります。
後遺障害部分についても、両事故の自賠責保険の枠を利用できる可能性があります。たとえば14級が認定された場合、自賠責の後遺障害部分の限度額は75万円ですが、両事故の自賠責に被害者請求をすることで、75万円×2社=150万円の支払いを受けられる可能性があります。
よくあるご質問
Q. 第1事故の保険会社から示談金の提示が来ました。応じてよいですか?
すぐに応じるべきではありません。上記のとおり、第2事故の示談が済む前に第1事故を示談してしまうと、賠償の一部をどちらの保険会社にも請求できなくなるおそれがあります。提示を受けた段階でご相談ください。
Q. 第2事故の後、病院は変えたほうがよいですか?
むしろ同じ医療機関への通院をおすすめします。同じ医師が第1事故からの症状の経過を一貫して把握できるため、治療上も後遺障害申請の場面でも望ましいといえます。